「今さら言えない小さな秘密」 2018年 フランス
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第67回
「今さら言えない小さな秘密」
2018年 フランス
90分
〈監督〉ピエール・ゴドー
原題:Raoul Taburin
心温まるコメディー・タッチのヒューマンドラマである。
舞台は南仏プロヴァンス地方のサン・セロン村。自転車修理の名人、自転車店のラウル・タビュランには、誰にも言えない秘密があった。それは自転車に乗れないということ。
子どもの頃から、さまざまな言い訳を考えて、それがバレないようにしてきた。家事を手伝ったり、熱心に自宅学習をしたり。しかしついに運命の日が来た。クラス全員でサイクリングに行くことになったのだ。ラウルは坂の上から、死ぬ覚悟で疾走する。猛スピードのおかげで倒れなかったが、そのまま空中2回転をし、池に頭から突っ込んでいった。ところが、彼は離れ技の持ち主として英雄にされてしまった。自転車を押して歩いても「離れ技の練習をしていて疲れているんだ」と人は思った。
彼はどうして自転車に乗れないかを突き止めるために自転車を分解して構造を調べ、自転車修理工になっていく。
結婚相手のマドレーヌは両親を自転車事故で失っていたため、ラウルのことが気がかりである。ラウルは、結婚の誓いと共に、今後自転車には乗らないという誓いをした。彼には好都合であった。子どもも二人授かり、幸せな家庭生活を送っていたが、再び、どうしても自転車に乗らなければならない運命の日がやってきた。彼は愛する家族に遺書を書いてそれに臨むことになる。
「たとえどんなに巧くウソをついても、ウソが白日にさらされる日が来る。バレると思えば思うほど、行動は常軌を逸していく」
これはラウルの心の声である。彼のウソや秘密はほほえましいものであったが、最近の政治家の国会答弁のウソはこの言葉のとおり深刻であり、罪深いものであると思う。